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電子部品と熱との果てしなき闘い
電子部品に熱は天敵。
大抵の電子機器は、作動中に温度が高くなるほど性能が低下、不安定化し、部材が劣化して寿命が短くなります。電子機器の歩む道は高性能化のほぼ一方通行。性能を高めると消費電力は増大しがち。
しかも部品はどんどん小さく。狭いところに大きな電力を投入され、電子部品は年々ヒートアップしています。過去も将来も、電子部品は熱との闘い。尽きるところがありません。
ではどうするか?
放熱板やフィン、小型扇風機を電子機器に取り付け風を当てて冷やす、もしくは、熱源である電子部品自体の構造や電子回路の設計を工夫し発熱を抑える、のが一般的な熱対策。
特に、冷やすのは、手っ取り早く有効な方法です。「冷やす」とは、熱いところから、冷たいところへ熱(エネルギー)を伝えること。これは電子、原子、分子の動きで運ぶ(熱伝導・対流)、もしくは電磁波で運ぶ(放射)ことでのみ実現されます。
これらの冷やし方の決定的な違いはなんでしょう?
熱伝導、対流では、熱い状態が冷たい状態と直接触れて達成されるのに対して、放射では直接触れてない遠くへ熱が運ばれます。
「電磁波で運ぶ」はピンとこないですか?とっても身近に起こっています。よく晴れて乾燥した冬の日の朝に、外気温が氷点下でなくても、地面に霜柱ができるのがそれ。昼間に温まった地面の熱が電磁波となって、夜の内に冷たい宇宙空間まで運ばれ、地面が冷やされる現象です。放射冷却の効果は結構ばかになりません。
砂漠では外気温に対して40℃の温度低下も可能とか1)。放射の効果をうまく使えば、日中の日の当たる場所でも温度を下げて省エネすることが可能だそうです2)。
ペルクールⓇ(PelcoolⓇ)H-7020とは?
このような放射によって冷やすメカニズムを最大限に活かした製品がペルクールH-7020です。
まず、放射放熱を担う無機物質の微粒子と、作業性を担う樹脂成分からなる塗料なので扱い簡単。スプレーやコーターで塗るだけ。せいぜい数十µmの厚みです。緻密な塗膜は、熱、溶剤、酸、アルカリ、さらには化学合成油や鉱物油に対して耐性を持ち、高温高湿環境やヒートサイクルの耐久性や耐候性も優れています3)。
電磁波で熱を運ぶメリットとして、表面が泥やほこりで汚れても冷却能力は低下しません。
✓電子部品で問題となる50~120℃程度の比較的低温域で少しでも温度を下げたい!
✓冷却フィンや冷却ファンが使えない狭空間・閉鎖系で高い冷却効果を得たい!
✓温度が高くなる局所領域を効率的に冷やしたい!
✓熱対策部品を削減し、製品デザインを簡素化、部品コストを低減したい!
✓熱源となる機器の温度を下げて、かつその周囲の環境の温度は高くしたくない!
✓熱対策しつつ、メンテナンスには手間をかけたくない!
インベントリー情報
サーマルマネージメントのソリューションの1つとして
ペルクールは、一般LEDランプや業務用照明、集魚灯、街路灯、駐車場や工事現場で使用されるサーチライトのような大型照明器具、フラットディスプレイのバックライト、無線基地局の基板筐体、太陽電池、大型モーター、音響機器等々で冷却効果が認められ、様々な場面で使用されています3)4)。
従来の熱伝導や対流による放熱設計に組込むのも、もちろんOK。
さらに、ペルクールでは単純に高放射率にするわけではなく、特許技術の材料設計4)5)により、お客様の冷やしたい温度に合わせた最適な放熱性能の製品を提供します。
また、カラーバリエーションも豊富で、意匠性を重視したおしゃれ製品にもお奨めです。
当社では、高耐熱性や高熱伝導性にさらに可撓性等を付与して高機能化した様々な熱対策製品を提供しています。 今回ご紹介した放熱塗料ペルクールH-7020も、特徴のある製品の1つとして、皆様の熱問題の解決にお役立ちたいと願っています。
PELCOOL H-7020 開発者 岩村栄治
ペルクール H-7020に関するお問い合わせ
サンプルなどのご要望がありましたら、お問い合わせフォームよりお申し込み下さい。折り返し、担当者よりご連絡いたします。
参考文献
1)C.G. Granqvist and A. Hjortsberg, “Radiation cooling to low temperature: general considerations and application to selectively emitting SiO films.”, J.Appl.Phys., 52 (1981), 4205-4220.
2)A.P. Raman, M.A. Anoma, L.Zhu, E. Rephaeli and S.Fan, ”Passive radiation cooling below ambient air temperature under direct sunlight.”, Nature, 515 (2014), 540-544.
3)岩村、両角, “放熱塗料の配合設計と基材との密着性、耐候性の向上“, 放熱・高耐熱材料の特性向上と熱対策技術, 技術情報協会No1900, (2017), 590-601.
4)S. Nakamura, E. Iwamura, Y. Ota and K. Nishioka,”Cooling effects of infrared radiative inorganic fillers in heat dissipation coatings at temperatures below 400K”, AIMS Materials Science, 5 (2018), 756-769.
5)日本国特許5475932, 6082890ほか.